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「お客様は神様」 過剰サービスとブラック企業に関する一考察

 こんにちは、シドロモド郎です。

 電通ブラック企業大賞を受賞しました。皆さんも知ってのとおり、昨年のクリスマスに女性の新入社員が過労自殺した事件は、彼女が東大卒のエリートで美人だったこともあり、社会に衝撃を与えました。

 電通は、世界最大の広告会社であり、日本において業界最大手に君臨しています。就活においては最難関企業の一角を占め、内定を勝ち取るのは至難です。一方で、軍隊的な組織風土を持つことでも知られ、日本で最も激務な会社の一つとして挙げられることも多い。

 東京労働局は、電通で過労死が繰り返し起きていることを重く見て、本社に対し強制捜査を執行。さらに、法人としての電通と、自殺した新入社員の当時の上長を書類送検するという異例の事態に発展しています。

 しかし、この事件はあくまで氷山の一角です。日本の企業、特にサービス業に分類される事業を展開している企業の多くで、こうした過重労働が常態化しています。

  • 人身事故による電車遅延のクレーム対応を行っていた南海電鉄の車掌が激怒。職務を放棄し、高架から飛び降りる。
  • ドミノピザがクリスマス限定のキャンペーンを実施した結果、現場の処理能力を超過する注文が殺到し、商品の受け渡しが大きく遅延。一部の店舗では警察が出動する事態に。
  • 佐川急便の配達員(正社員)が路上で荷物を叩きつけている動画がYoutubeにアップされ、物議を醸す。

 以上のように、最近はサービス業の現場に過剰な負荷がかかり、パンクした末に起きた事件が多く報道されるようになりました。なぜ、日本のサービス業でこんなことが起きているのでしょうか。

 それは、「お客様は神様」の精神が支配的な社会だからです

 当たり前ですが、この精神には功罪両面があります。この精神が支配的になるほど、サービスの質は向上し、消費者の便益は向上することでしょう。しかし、今の日本ではサービス業、特に飲食・介護・物流現場の待遇は十分とは言えず、報酬に見合わない過剰な労働を強いられるという事態が起きています。これは、「お客様は神様」の精神の負の側面です。

 欧米では、「このラインを超えたら客ではない」という基準が存在し、消費者の力が日本ほど強くありません。悪質な客に対してはサービスの提供を拒否することが、権利として認められています。海外の観光客が日本の「おもてなし」の精神を褒め称えている様子がよく見られますが、あれは日本のサービスがそれほど過剰なものであることの裏返しといえるでしょう。

 冒頭で述べた電通の事件も、「お客様は神様」の精神によって生まれた激務によって起こってしまったものです。広告会社の業務はサービス業であり、営業はクライアントの無理な要求にも応える必要があります。クライアントの為なら何でもやるという姿勢こそ、電通電通たらしめる精神的支柱であり、同時に過剰サービスの温床なのです。この問題は、電通ほど異常ではないにしても、広告というビジネス全般において見られる構造的問題です。

 過剰サービスによる労働問題が表面化した今、私たちは「お客様は神様」という精神論に基づいた働き方を改める必要があるでしょう。必要なのは過剰なサービスではなく、サービスの提供者と受給者が互いに気持ちよくいられる適度なサービスです。この根深い問題が解決するには、まだたくさんの時間が必要でしょうが、社会全体が過剰サービスに異を唱えつづけることが大切でしょう。